2023/11/04 20:37

はじめまして、畑野彩萌です。はたの あやめと読みます。

現在大学院修士2年生で、作曲を専門に勉強しています。

2022年8月にYouTube公開&楽譜販売を開始した、マリンバ1台のための3重奏「CCC(シーシーシー)」について、楽譜を購入してくださる方が何人もいらっしゃったり、自分の周りで演奏してくださる方も増えてきたりして嬉しいです。ありがとうございます。


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作曲者が発言するとそれが絶対的な正解になってしまいがちで少し怖いのですがそのようなつもりはなくて、ただふと自分の考えを書き起こしてみたくなったので書きました。

こちらのノートは大きく2つのパートに分かれています。
前半は曲ができるまでの流れや裏話などです。
後半が曲の解説です。
演奏を聴いていただいたり、演奏なさる上でこのノートがプラスに働けば嬉しいです。


1 作曲の背景
「CCC」を作曲したのは2021年の春から夏にかけてです。当時大学4年生で、大学での前期の提出作品として書きました。
初演は学内での7月の前期演奏審査で、演奏者は田中結女さん、三宅和奏さん、青山絵海さんです。

1-1「CCC」の誕生
構想を練り始めたのは2021年3月末です。初演メンバーでもある大学の同期の田中さんと青山さんが2人で打楽器デュオの演奏会を開いていたのですが、ホールで聴いたIvan Trevinoさん作曲のマリンバ1台による2重奏「2+1」が忘れられませんでした。(後日「2+1」に影響をうけて「CCC」を書いたことを作曲者本人にメールしたら、ポジティブな感想をいただけました、トレヴィノさん優しい…)

もともと卒業までに打楽器アンサンブルを書きたいと思っていましたが、さらにその思いが強くなったので、スムーズに構想が進んでいきました。
書くのであればマリンバ1台のアンサンブル曲が書きたかったのですが、当時は演奏者同士の間をパーテーションで区切っているような時期だったので、マリンバ1台のための曲を書いたところで演奏してもらえるのかどうか不安でした。
ですが書き始めてしまえば誰も止められないかなと思い(笑)とりあえず挑戦してみました。むしろ「密」をテーマにしてしまおうと。
仮に1台での演奏の許可が降りずに、初演は1人1台×3台で演奏することになったとしても、いずれ1台で演奏できる時期が来たらそれもまた嬉しいなというスタンスでしたし、今この作品を残すということに意味があるとも当時思っていました。
(結果初演も1台での演奏が叶いました)
調べるうちに、英語では「三密」のことを「3Cs(Closed spaces, Crowded places, Close-contact settings)」と表現すると知りました。

3つのC=ドから始まり、3人で演奏する、3部形式の作品。

以上が作曲に至った流れです。

1-2 初演メンバー決め
同年7月の前期試験で発表したかったので、すぐに演奏者を決める必要がありました。まず田中さんと青山さんにお願いし、即OKをもらえました。
あと1枠は、2人とも私とも同じ、安藤芳広先生門下の先輩であり、私の大好きな打楽器奏者の1人である三宅和奏さんにお願いしました。
今思えば、音符を書き始めるより前に奏者が決まっていたので、それぞれのキャラクターに合わせて曲を書き進めていた部分は少なからずあったと思います。

1-3 スカスカの楽譜
作曲当時の1番の悩みは、提出締切が5月末なのに対し、自分の教育実習が5月半ばから6月頭にかけてあったことでした。実習中に締め切り…!むり…!
実習前にある程度書かないと大変なことになるのが目に見えていたので、余裕を持って書き始めることができたのだとは思います。

ただ仮提出段階では中間部はほぼできていませんでした(実習に行っていた分少し評価が甘かったので許されました)。
ただ楽譜を奏者に早めに渡さないといけないので、かなり強行突破ではあるのですが、G.P.を多く含んだ未完成の楽譜を奏者に渡し、楽譜ができているところから合わせをし、回を追うごとに隙間が埋まっていくという、ある程度の関係性ができていないと許されないようなやり方で進めていました…。
合わせをしながら作ったからこそできた曲ではあるのですが、奏者の3人ありがとうごめんなさいという感じですね…

1-4 初演、ルンルン
2021年7月7日、武蔵野音楽大学ウィンドアンサンブルホール。
3人の素晴らしい演奏で初演は大成功でした。
打楽器の先輩、同期、後輩、安藤芳広先生も聴いてくださって、終演後に先生がいつになくルンルンだったので、みんなで不思議そうにお見送りしたのを覚えています(笑)。

1-5 初演後の演奏機会
初演メンバーには、初演後に2回演奏をお願いしています。
1つは同年2021年秋にしたMV撮影、もう1つは翌年2022年夏に行われた千葉県の武蔵野音大卒業生の新人演奏会です。

上記のMV=YouTube動画です。 
もともとは当時の作曲科のDAWの授業での、音と映像を組み合わせた作品を作る、という課題でした。
演奏動画にしては映像に動きが多いと思うのですがそのためです。

新人演奏会のころには初演から1年近く経っていたのですが、3人の演奏は毎度最高値を更新していて感謝しかありませんでした。

初演、MV撮影、新人演奏会と、それぞれ数ヶ月間あいだが空いているのですが、3人とも完全に暗譜していて、楽譜で音を確認しているところをほぼ見たことがないです。

1-6 楽譜販売にあたって
それまで作曲科の中でもひっそりと暮らしていた私にとって、自分の作品を世に出すなど考えもしていませんでした。
安藤芳広先生の影響がとても大きかったです。先生が指導校に楽譜を渡してくださったり、門下内のアンサンブルで他の人もやりなさいと言ってくださったりしていて、それを見てやっと自分の作品を広めてもいいのかなと思えるようになりました。
先生には感謝の気持ちでいっぱいです。

2 作品解説
解説と呼んでいいほど立派ではありませんが、自分の生きた証を残せるっていいよなあと思うことが多々あるので自由に書いています。

ただ演奏者のみなさんそれぞれの解釈にもとっても興味があるので、書きすぎないようにしました。

リハーサルマークは動画にも載せているので、遠慮なく使わせていただきますね。

2-1 全体を通して
マリンバの曲を書く上で目指しているのは、豊かな倍音をなるべく生かすことです。
良くも悪くもはっきりしていない音色なので、7thや9thなどのテンションノートを多く入れていい意味でのもわっと感をつくれるようにしています。
また個人的な好みの話なのですが、トレモロでメロディを弾くのがどうも連打に聞こえてしまってあまり好きではなく、本作品ではトレモロを1つも使っていないです。

2-2 リハーサルマークごとにひとこと
冒頭部分は、「3つのド(同音反復)」「順次進行+跳躍」「分散和音」これらの素材を1人1人がそれぞれ担当し、それを幾度も反復する、いわばミニマル・ミュージックを感じさせます。

A
As durのテーマが登場します。
冒頭にもあった分散和音+順次進行+跳躍でできています。このテーマを逆行、反逆行、変形などさせたものが今後主旋律にも伴奏にもちょこちょこ出てきます。

B
高音部でリズムを刻むパートはドラムセットのハイハットシンバルをイメージしています。(事前知識なしで動画を見るとカオスかもしれません)

C
D直前で突然g mollに転調するときの、ドラムのフィルインのような低音パートのソロがお気に入りです。

D
冒頭の素材がいろいろ隠れています。
低音パートがいいグルーヴ感をだせると最高です。安藤先生がジャンベを叩いてる感じで〜と同門の人に言うと大体すぐ理解してくれる部分です(笑)。

E
C durに転調してテーマが戻ってきます。それぞれのパートに違った色のソロがあります。
そして、冒頭と同じようにドの反復をしながら次第にテンポも落ち着き、中間部へ続きます。

F
中間部を通して言えることなのですが、前半と比べて音の数を大幅に減らして、余白多めで作っています。
トレモロなしとテンションノートの魅力がぞんぶんに発揮されるところだと思っています。
主旋律はテーマの変形です。

G
この曲の中でいちばんソーシャルディスタンスを取っているところです。
(楽譜上奏者それぞれの音域をかなり離したのですが、実際に引きで見ると思っていたよりあんまり離れているように見えないなと思いました笑)

H
優雅に歌うようなD durです。
EからのメロディをそのままD durにしたつもりだったのですが、途中で違うことに気付きました…(ガチガチの固定ドなのでそういうのに気づくのが苦手だという言い訳をさせてください)
しかし、そのまま移調するより断然こっちのほうが好きです。

I
ふっと儚さも感じさせるようなソロです。この部分は合わせをしながら書き足した部分で、三宅さんが演奏する姿を想像しながら書きました。

J
荘厳なB durです。
冒頭部が短縮された形で戻ってきます。

K
前半にあったハイハットパートの音が変わっているのでf mollではなくAs dur感が強くなっています。低音パートの音域も上がっているのもあって、前半よりかわいいです。きゅん♡

L
この曲の中で唯一コピー&ペーストで打ち込める部分です。
ただ前後が違うのでまた違った感じになります。

M
自分も演奏したことがあるのですが、アンサンブルが本当に難しいです。ごめんなさい。

N
最後の音は、初演時は低音パートがオクターブ下の音も演奏していたのですが、単音の方がいいなと思ったので変更しました。


以上ざっくりですが解説です。
演奏者の方のさまざまな解釈をぜひ知りたいので、演奏動画などYouTubeにあげていただけたら嬉しいです。
その際はぜひご連絡いただければと思います!

3 まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございました!お疲れ様でした。
今後も自作品の解説など残していきたいと思います。
ご質問やご感想などございましたらメールやLINE、Xなどでご連絡ください☺️

畑野彩萌 はたのあやめ Ayame Hatano
作曲しています。 武蔵野音楽大学大学院研究科修士課程作曲専攻2年/作曲のほかに、打楽器、トランペット、エアロフォン、リコーダー、ピアノの演奏をしたり歌ったり